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エマ・ダーシー『記憶の扉が開いたら』を読んだ感想

実業家デミアンと、グラフックデザイナー ナタリーのロマンス。

 

夫と息子を同時に転落事故で無くしたナタリーは悲しみにくれる生活。そんな彼女を支え、励ましてくれるのは亡き夫の友人であり夫の会社の共同経営者のデミアンです。

 

 

ナタリーとデミアンの二人が、ふと口論になったことがきっかけで、ナタリーは頭を強く打ち記憶喪失に。いずれは戻るだろう記憶を抱え、もどかしい気持ちと、目の前にいるデミアンへの恋心を強く自覚。

二人の気持ちは、かつてない程接近しますが、ナタリーの記憶の扉は閉ざされたまま。

二人はめでたく結ばれるかと思いきや、この記憶喪失がきっかけで過去の苦しい感情が表面化し、ちょっとドロっとした人間関係の物語に発展します。

 

 

甘いロマンスではないこの作品。
人を愛するって、夫婦の愛って、きれいごとばかりじゃないのね、と感じ入るロマンス作品です。
甘いハッピーエンドがお好きな方は、取り扱いにご注意くださいね。
 

 

登場人物が抱える葛藤が見どころ

デミアンと、ナタリーの亡き夫ライアンは親友同士。会社を共同で経営していました。一見、硬い友情で結ばれているように見えますが、その実二人とも複雑な気持ちを抱えています。

 

 

  • ライアンはデミアンに対する劣等感を。
  • デミアンは、ライアンに対し嫉妬を。
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    ライアンは、それはそれはナイスガイなのですが、つらい幼少期を過ごしてきたこともあり、ちょっとアレな人です。女性無しではいられない。浮気三昧を超えたふるまいです。一種の依存症に近いのでは?と思われます。
    ナタリーとの結婚式当日も、いけないことをしちゃったりする我慢の利かない男性。
    でも、子煩悩で優しい父親の顔も持ち合わせているライアン。

     

     

     

    一方、ライアンが心の中でライバル視しているデミアンですが、こちらは温かい家庭に育ってきた堅実な男性。将来的には、沢山子どもが欲しいな、と思ってはいましたが、身持ちの悪い妻とうまくいかず離婚。ちょっと女性関係で痛手を被っているバツイチなナイスガイです。
    で、彼の内心は、ライアンに嫉妬メラメラ。実は結婚式当日に会ったライアンの花嫁ナタリーに一目ぼれしてしまったからです。

     

     

     

    自分が求めていた女性なこの人だ!とびびっときたものの、もう時すでに遅し。
    お相手はウェディングドレスを着て、他の男の妻になろうとしている。
    ここで、彼はあきらめようとはするものの、その後、ライアンの女性関係に対し怒りを抱きます。
    幸せな結婚生活を送っていないライアンとナタリーに対し、複雑な気持ちを抱くわけです。

     

     

     

    そして、極め付けが!!ヒロインナタリー。
    何かにつけ、夫ライアンが、自分との会話で「デミアンが~」「デミアンが~」とデミアン教の教祖のような発言を繰り返すので、腹立たしく感じています。
    薄々は、夫が浮気を繰り返していることも知っており、自分の結婚生活が破綻寸前も重々承知。
    一方で、子煩悩な夫をみると離婚も決めかねる・・・といった苦しい状況です。
    自分を顧みない夫ではなく、デミアンに対しても、うっすら恋心を抱いているのですが、そんなこと言えるはずがありません。
    そして、極めつけに夫の浮気の証拠隠しに、デミアンが一役買ってると誤解をしてるので、デミアンに対しては、恋心と同時に怒りを抱えています。

     

     

     

    そんな三人の登場人物に、デミアンの性悪元の元妻と、ライアンの浮気相手?デミアンの恋人?が登場で、なかなかてんこ盛り。

    驚き記憶喪失後の展開

    こういった複雑な気持ちをかかえたヒーロー・ヒロイン。
    二人とも憎からず思ってるのなら、くっついちゃえばいいのですが、そうはいきません。

     

     

    秘めていた、憎しみ・嫉妬・悲しみ・やるせなさが一気にほどばしります。
    いささか戸惑う程の短いながらも急展開。短いながらも、読ませてくれます。

     

     

    特に、夫ライアンの事故の真実と、ヒーローライアンの衝撃の告白に驚きです。
    私、ちょっとドン引き・・・。

     

     

    ドロドロ系のロマンスの結末としては、無難な着地でしたが、後味はあまりよくないロマンス小説でした。

     

     

    でも、それが人。それが人間。聖人君子じゃないもの。
    人を愛するってきれいごとじゃないし、誰だってエゴイスティックな面が出てきちゃう。

     

    単なる作られたハッピーロマンスだけでは物足りない、ちょっとしたリアリティがあった方がスキヨという方は楽しめる作品だと思います。