キャスリーン・E・ウッディウィス『狼と鳩』を読んだ感想

キャスリーン・E・ウッディウィスの11世紀のイギリスを舞台にしたヒストリカルロマンス。

 

イングランドを征服しにやってきたノルマン人のウルフガーと、サクソン人の元領主の娘エイスリンのロマンス。

 

とにかくヒロインが可哀想。

突然やってきたノルマン人に父親は殺され、母親はむごい仕打ちをうけ気がふれてしまいました。エイスリンは首に縄をかけられ、無理やり凌辱・・・

出だしから、暗く重いストーリー展開に、ちょっとドン引きしちゃうので、甘いロマンスを期待されてる方は取り扱い注意の作品。

 

今回、私はサンリオ版を読みましたが、Amazonでみつけられなかったので、ソフトバンク版をリンクしますね。名作ではありますが、賛否両論といったところでしょうか。

 

あまりにむごい仕打ちを受けるヒロインに胸を痛める作品です。

 

舞台はイングランド ”ノルマン・コンクエスト”

 

ヒストリカルというと18世紀あたりを舞台にした舞踏会などキラキラ美しい衣装の貴族が登場する作品が多いですが、この作品はもう一息、さかのぼった作品。

 

その昔、イングランドではエドワード懺悔王が1042年から1066年まで王座についていましたが、彼には子供がおらず、彼が病没した後に王座をめぐって混乱がおきました。

 

結局、エドワード王の妻の兄弟が王座につきますが、そこで待ったをかけた人物がいます。ノルマンディ公ウィリアムです。ノルマンディ公は、自らの王位を主張し、イングランドへ攻撃を開始。

 

この『狼と鳩』では、このノルマンディ公ウィリアムの信頼あつく忠義を尽くす騎士として、ヒーロー ウルフガーが登場します。

 

征服するノルマン人側が、ウルフガー。征服されるイングランドのサクソン人側がエイスリンとなります。

 

 

憎むべきはずの敵。ヒーローに何故か胸が高鳴る哀れなヒロイン

 

ノルマン人ラグナ―が、ウルフガーより先んじて乗り込み、エイスリンの父親の領地を踏みにじりました。父親を殺され、母親に暴力をふるい、そしてエイスリンまでも、ラグナ―に凌辱されます。

 

エイスリンは領主の娘から、一転して奴隷です。

 

ところが、このラグナ―は、とんでもない卑怯なやつで、本来、無血開城をするべきはずのところ、やたらめったら農民は殺すわ、領主は殺すわ、エイスリンに手をつけるわ、やりたい放題。

 

本来のあるべき姿に戻すべく、後からやってきたノルマン人ウルフガーに手ひどく叱られ、ひっこむのですが、殺されてしまった人々はかえってきません。しかも、ラグナ―はウルフガ-を逆恨み。

 

 

この時点では、エイスリンはノルマン人を敵だとみなしています。

 

ウルフガーが領主に収まり、ラグナ―よりましになったとはいえ、気は許せません。

エイスリンは彼の慰み者にされるのか、情婦にされるのか、本当は気が気でない。

 

 

ラグナ―はノルマン人のボンボンですが、どうやらウルフガ-は庶子としてさげすまれ、剣一本、己の腕一つで今の地位を勝ち取ってきたらしい。彼は、口では、乱暴なことをいったりしますが、結構やさしいのだな、とエイスリンは気がつきます。

 

 

庶子としてさげすまれ、女嫌いでも有名なウルフガ-。でも、どこか優しく公正で、正義を貫く彼の姿に、エイスリンは少しずつ惹かれていきます。口は乱暴なんですけどね。

 

 

冷たく、美しい、人形のようなエイスリンが、ほんのり娘らしい態度をとるのはウルフガ-の前でだけ。

 

 

 

 

下巻でヒーローが激変。メロメロっぷりに苦笑。

 

孤独を映し出す灰色の瞳を持つウルフガ-に、エイスリンは心の中で愛を誓い、彼のただ一人の女になりたいと願います。そして、口には出しませんが、彼を喜ばせたい一心で、懸命につくします。

 

ところが、ウルフガ-は女嫌い。

女なんか、信頼するか。けっ。飽きたら、捨てればいいんだの考えの持ち主。

 

 

ウルフガ-の異父兄妹登場で、エイスリンはこれでもか、というくらい妹にいじめられますが、愚痴一ついいません。何かを欲しがる風でもない。もちろん、そんな彼女の健気さにウルフガ-は気がついています。

 

 

そして、エイスリンの柔らかな身体と唇に酔いしれ、彼に捧げられた愛の甘さに、彼の頑なな心が徐々解けていくのが、見どころです。下巻はウルフどころが、ドックガーくらいになってしまいます。牙ぬけたね。(笑)

 

エイスリンラブ。でも、絶対結婚はしないんですって。

 

 

この辺り、あくまで結婚を望むエイスリンと、エイスリンの愛はほしいけれども、結婚はしたくないウルフガ-のかけひきは、ちょっと笑えます。

 

 

キリスト教的な宗教観や時代背景からすると、未婚の母親になるのは非常にタブーなので、エイスリンが結婚にこだわるのはわかります。

 

 

といういより、彼が他の女にいってしまうのが嫌。イジメにあっても、愚痴一ついわないのに、ウルフガ-と結婚したい!という硬い決心、あれこれ結婚をにおわせる、エイスリン・・・あんた、すごいよの一言です。

 

 

彼の腕に中で、激しく乱れてしまう自分を恥じて、ことが終わるとベッドで泣きぬれるエイスリン。これも作戦か?(違うと思いますが・・・)と思うと、なかなかしたたかです。

 

 

これじゃ、娼婦と同じだわ、と内心思い泣きぬれる彼女をみて「キョトーン」のウルフガー。

 

よかったくせに、なんで泣くんだよ、と思いながら、彼女のご機嫌をとるために、シブチンなのに、財布の紐をゆるめてエイスリンにお洋服を買ってあげたりします。

 

もう、相思相愛なんだから、結婚してあげてちょ、ウルフガ-。って感じ。この辺りは上巻の陰鬱なイメージは全くなくって、純粋に甘ーいロマンスを味わえます。

 

 

 

そんな、いちゃいちゃぶりに目があてられないのですが、終盤、彼女の初めてのお相手だったラグナ―が、なんだかウルフガ-を陥れるべく、汚い手をつかってなにかたくらんでるらしい。そこには、エイスリンを妬む、ウルフガ-の妹も一枚かんでいて・・・・

 

 

 

 

なんといっても、やっぱりこの本のキモは最後のおち。

大どんでん返しで、目が点です。これは、本当に、さいごのさいごの、最後までわかりませんので、ネタバレ控えます。

私は、作品の最初と最後だけを先に読む癖があって(先にオチが知りたい)、超残念でした・・・・あせって先にオチは読むべからず!面白さ、半減しちゃうので、ご注意を。