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狂おしい程の愛ゆえに、愛する高級娼婦を誘拐、そして監禁する若き公爵。
公爵に惹かれながらもプライドを守るため、身体は許しても、決して心は許さないと決めた元娼婦。
禁断のテーマを得意とするアナキャンベルの処女作。
当時、この作品をひっさげて登場した作者は、ヒストリカルの大型新人として注目を集めました。
二人の愛が重なり合い、想いがすれ違う大人のヒストリカルロマンス。
『罪深き愛のゆくえ』のあらすじ
1828年 舞台はロンドン。
ヴェリティは元高級娼婦。
魔性の女として話題の女性でした。
15歳から足を踏み入れた情婦の生活。
自らの生き方に終止符をうつため、弟ベンジャミンと念入りに計画を練ってきました。
彼女のこころ残りは、1つ。
愛人契約をしていたカイルモア公爵。
1年の契約で、彼とは関係を結び、お別れをする予定でした。
ところが、カイルモア公爵は、契約が終了になる頃、5年の契約の延長の申し込みをします。
さらには結婚の申し出というヴェリティには思いもよらない提案をしてきました。
貧しい生活の中、年の離れた弟と妹を養うために、踏み入れた世界ですが、身体は許しても、心は許さないと硬く決めていたヴェリティ。
カイルモア公爵の申し出に内心うれしく思いながらも、彼の「貴族」としての「思惑」になにか作為的なものを感じます。
娼婦が公爵夫人になんて誰がどう考えてもおかしい。
お金も十分たまった、男たちに人形のように扱われる生活はもうたくさん。
カイルモア公爵の結婚の申し出よりも、ヴェリティは自分らしく生きる「自由」を選びました。
一方、カイルモア公爵は、自分の結婚の申し出を断られ、憤慨します。
どん底の生活から、逃れられるのに。
なにより、大切なヴェリティこと高級娼婦「ソレイヤ」から、拒絶され、彼は混乱と動揺を隠せませんでした。
翌日、愛する「ソレイヤ」の元へ向かったカイルモア公爵。
愛人がいるはずの容赦な邸宅は、もぬけの空。
「ソレイヤ」が行方をくらませた。
愛は憎しみに変わり、怒り狂ったカイルモア公爵。
たっぷりと金をつぎ込んで、安楽な生活をさせてやったのに。
別れぎわに、あんな口づけまでかわしたのに。
あばずれ女と、一緒に逃げたあの女の間男、二人必ずみつけだしてやる。
アナ・キャンベル『罪深き愛のゆくえ』を読んだ感想
ヒーローのカイルモア公爵と、ヒロイン「ソレイヤ」ことヴェリティは、最初から両想い確実。
二人は立場の違いから、本当の気持ちを告げることなく愛人として1年過ごします。
実は、カイルモア公爵は「愛人の順番待ち」で6年費やしていました。
長い間、一人の女性を思い続ける激しい感情の持ち主で、その気質故に、自らの行動や生い立ちに苦しみを感じています。
行動は犯罪そのもので、完全に「やばい人」なのです.
自分でも「その傾向」認めてはいますが、抑えられません。
狂おしい程の想いと、葛藤が彼をさいなむ描写が萌えポイント。
ソレイヤと、ヴェリティは最初から、愛人関係なのでホットなシーンに向けての盛り上がり(?)はややかけます。
初めてさん(?)カップルと比べると仕方ないですね。
登場人物が少なく、終盤の終盤で悪役の真打登場のため、始終ヒーローが悪者扱い(実際そうなんですが)ちょっとお気の毒な印象です。
実際二人が愛人関係だった時には、肉体の快楽以上の喜びを分かち合ったでしょうし、それはヒロインも認めています。
法律的には、愛人契約を1年で終了し、行方をくらましたヴェリティには何の落ち度もありませんが、気持ちの問題として、カイルモア公爵が裏切られたと感じても仕方ありません。
二人が気持ちを通わせるエピソードで、お互いの生い立ちを告白するシーンがあります。
誰にも言えなかった苦しい過去を告白するカイルモア公爵が痛々しい。
1つ告白をした後、心の中で「そうだ、いつか、あの時のつらかたこともヴェリティに話をしよう」
一番つらかった思い出だけが、彼を苦しめていたのではなく、いくつもの押さえつけていた苦しい感情が、次から次へとあふれて出る公爵に切なくなりました。
気になったのは、二人の気持ちがすれ違う場面が、若干長いかな、という印象。
初期の作品なので、初々しい感じもまた楽しめる一冊です。